結論

FSVP(Foreign Supplier Verification Program、外国供給者検証プログラム)とは、米国の輸入者に対して「輸入する食品が米国の安全基準を満たしていることを自ら検証せよ」と義務づける制度です。FSMA(食品安全強化法)に基づき、21 CFR Part 1 Subpart L に定められています。

重要なのは、義務を負うのは米国側の輸入者であり、日本の輸出者・製造者ではないという点です。

ただし——ここが実務の核心ですが——日本側が資料を出さなければ、輸入者はこの義務を果たせません。結果として貨物は止まります。「自社の義務ではない」と考えて放置していると、ある日輸入者から大量の書類要求が来て、対応できずに出荷が遅れる、というのが典型的な流れです。

1. FSVPが求めていること

輸入者は、供給者ごと・食品ごとに、おおむね次の作業を行う必要があります。

要件内容
ハザード分析その食品に想定される危害要因(生物学的・化学的・物理的)を特定し、管理が必要かを判断する
供給者の評価外国供給者の実績・管理体制・過去の違反歴などを評価する
検証活動評価結果に応じて、現地監査・サンプリング検査・記録のレビューなどを実施する
是正措置問題が判明した場合の対応を定め、実行する
定期的な再評価原則として定期的に評価を見直す(重大な情報を得た場合は都度)
手順の文書化と記録保持上記を書面の手順として定め、記録を一定期間保存する

検証活動の水準は、危害の深刻度と供給者のリスクによって変わります。重篤な健康被害につながり得るハザードが供給者側で管理されている場合、原則として年1回の現地監査が求められるなど、要求水準が上がります。

2. 誰が「FSVP importer」になるのか

FSVPの義務者は「FSVP importer」と呼ばれます。定義は次のとおりです。

  1. 輸入時点における米国の所有者または荷受人(consignee)
  2. 該当者がいない場合 ― 外国の所有者・荷受人が米国内に置く代理人または代表者
越境EC・DDP取引の落とし穴
米国内に所有者・荷受人がいない取引形態(DDP条件での販売、米国のフルフィルメント倉庫へ直送するEC等)では、②が適用され、日本側が立てた米国内の代表者がFSVP importer になり得ます。 「輸入者がいないから自社には関係ない」ではなく、「輸入者がいないからこそ、こちら側に義務が回ってくる」という構造です。取引条件を決める段階で確認してください。

なお、通関申告(ACE)の際には、FSVP importer の名称・メールアドレス・DUNSナンバーを申告する運用となっています。ここが空欄・不正確だと、その時点で貨物が止まります。

3. 米国代理人・施設登録との違い

米国食品輸出でもっとも混同されるのが、この3つです。

施設登録(FFR)米国代理人(U.S. Agent)FSVP
義務者日本の施設―(施設が指名する)米国の輸入者
性格施設の届出FDAとの連絡窓口食品安全の検証責任
タイミング2年ごとの更新登録に連動輸入のたび(記録は継続的に保持)
根拠FD&C法 §415 / 21 CFR Part 1 Subpart H同左FSMA / 21 CFR Part 1 Subpart L

「FDA登録は済んでいます」という輸入者の発言は、施設登録の話であってFSVPではない——このすれ違いが頻繁に起きます。米国代理人を立てても、施設登録を完了しても、FSVPの要件は満たされません。3つは別建てです。

4. 適用除外・緩和される場合

すべての輸入食品に、同じ水準のFSVPが求められるわけではありません。代表的なものを挙げます。

※ 適用除外の判断は製品分類と取引形態に依存します。「うちは対象外のはず」と自己判断せず、輸入者と共有したうえで確認してください。

5. 日本の供給者が用意すべき7つの資料

義務者ではなくても、実務では次の資料の提出を求められます。先に揃えておくと、商談から出荷までの時間が大きく短縮されます。

  1. 食品安全計画/HACCPプラン(英文の要約があると理想的)
  2. ハザード分析の結果 ― どの危害要因をどう管理しているか
  3. 工程管理の記録 ― 温度記録、金属探知の記録など
  4. 第三者認証の証明書 ― FSSC 22000、SQF、BRCGS 等を取得している場合
  5. 原材料の産地・供給者情報
  6. アレルゲン管理の手順 ― 交差接触の防止策を含む
  7. 直近の監査結果・是正記録
第三者認証は「近道」になります
FSSC 22000 等の認証を取得していると、輸入者にとって供給者評価の負担が下がるため、要求される検証活動の水準が実質的に軽くなることが多くあります。米国向けを本格化する予定があるなら、認証取得は交渉材料として有効です。

6. 対応していない場合に何が起きるか

FDAは輸入者に対してFSVPの記録提出を求める検査を行います。近年は現地訪問だけでなく、記録の提出要求という形での遠隔検査が広く行われています。

  1. FDAが輸入者にFSVP記録の提出を要求
  2. 記録が出せない、または内容が不十分 → 指摘
  3. 是正されない場合 → 輸入拒否
  4. 繰り返す場合 → 輸入警告(Import Alert)の対象となり得る

ここで日本側に影響が及びます。輸入者が指摘を受けた供給者は、取引を打ち切られるのが通例です。義務者でなくても、結果は自社に返ってきます。

7. ラベルとの関係 ― どちらも「止まる」理由になる

FSVPは食品安全の枠組み、ラベルは表示の枠組みで、別の規則です。ただし、通関で貨物が止まるという結果は同じです。

FSVPFDA対応ラベル
問われるもの供給者の食品安全体制製品表示の規則適合
義務者米国の輸入者実質的に製造者・輸出者側が整える
不備の結果輸入拒否・取引停止不当表示による輸入拒否
準備の性質体制と記録(時間がかかる)製品ごとの制作(SKUごとに発生)

米国輸出の準備は、この2つを並行して進める必要があります。順番に片付けようとすると、必ずどちらかが出荷直前まで残ります。

A Knots Label について

A Knots Label は、米国輸出のFDA対応ラベル制作を専門に行うサービスです。規制実務の専門家が一件ずつ最終確認し、当社起因の表示不備が判明した場合は無償で是正対応します。

FSVPそのものは米国輸入者の義務ですが、日本側が求められる資料の整理、施設登録(FFR)・米国代理人(U.S. Agent)の手配については、A Knots株式会社の海外進出支援ネットワークを通じてご相談いただけます。

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よくある質問

Q. FSVPの責任を負うのは誰ですか?

米国側の輸入者(FSVP importer)です。原則として輸入時点の米国の所有者または荷受人がこれにあたります。日本の輸出者は直接の義務者ではありませんが、資料提供なしに輸入者は義務を果たせません。

Q. 米国代理人と同じものですか?

違います。米国代理人は施設登録に伴うFDAとの連絡窓口、FSVPは輸入者に課される検証責任です。代理人を立ててもFSVPは満たされません。

Q. 米国に輸入者がいない場合は?

外国の所有者・荷受人が米国内に置く代理人または代表者がFSVP importer になります。DDPや越境ECでは事前確認が必要です。

Q. 日本側は何を用意すればよいですか?

食品安全計画/HACCP、ハザード分析、工程管理記録、第三者認証、原材料の産地情報、アレルゲン管理手順、直近の監査結果などです。

Q. 対応していないとどうなりますか?

輸入者がFDAの記録提出要求に応じられず、輸入拒否や輸入警告につながる可能性があります。指摘を受けた供給者は取引を打ち切られるのが通例です。

出典・一次情報

本記事は以下のFDA公式情報および米国連邦規則に基づいて作成しています。規制内容は改正される場合があるため、実務判断の際は必ず最新の一次情報をご確認ください。

最終更新: 2026年8月23日

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別案件の法的助言ではありません。規制は改正される場合があります。