結論

米国の原材料表示(Ingredients)は 21 CFR 101.4 に定められており、「使用重量の多い順に、一般的な名称で、すべて列挙する」のが原則です。

日本のラベルからの変換で最大の壁になるのが、日本で認められている「一括名表示」が米国では原則として使えない点です。「調味料(アミノ酸等)」「乳化剤」「pH調整剤」といった表記をそのまま英訳することはできず、配合表まで遡って中身の物質を特定する必要があります。

この作業は翻訳ではありません。情報を新たに集め直す作業です。ラベル制作の見積が「英訳だけ」の価格になっている場合、ここが抜けています。

1. 基本ルール ― 重量順・一般名・全列挙

ルール内容
重量順製造時に使用した重量の多い順(降順)に記載。水を加えている場合、水も重量に含めて順位を判断します
一般名米国で通用するcommon or usual name を使用。直訳やローマ字表記は不可
全列挙使用したすべての原材料を記載。「その他」でまとめることはできません
見出し「INGREDIENTS:」の語で始めるのが一般的です
記載場所情報パネル。責任企業表示と同じ面に、間に他の情報を挟まず配置します

2%以下ルール

含有量が2%以下の原材料については、重量順に並べる代わりに、末尾に 「CONTAINS 2 PERCENT OR LESS OF: ...」 といった注記を付したうえで、まとめて記載することが認められています。

少量の添加物が多い製品では、この方法を使うと配合比率の詳細が推測されにくくなるという副次的な利点もあります。ただし2%以下であることの根拠は社内で保持してください。

2. 最大の壁 ― 日本の「一括名」は使えない

日本の食品表示法では、一定の添加物について用途名や一括名でまとめて表示することが認められています。米国にはこの制度がありません。

日本の表記米国での扱い
調味料(アミノ酸等)不可。実際の物質名(例:Monosodium Glutamate)を記載
乳化剤不可。例:Soy Lecithin、Mono- and Diglycerides など個別に
pH調整剤不可。例:Citric Acid、Sodium Citrate など個別に
膨張剤不可。例:Sodium Bicarbonate など個別に
増粘剤(加工デンプン)不可。例:Modified Corn Starch など具体的に
香料「Natural Flavor」「Artificial Flavor」の表記が認められる場合があります

この作業に必要なのは、翻訳者ではなく配合情報です。自社製造なら社内の配合表、OEM製造なら製造委託先への照会が必要になります。ここで情報が出てこず、プロジェクトが止まるケースが実際に多くあります。

先に着手しておくこと
OEM・受託製造で作っている製品の場合、製造元に「添加物の物質名レベルの配合情報」を出してもらえるかを、ラベル制作の前に確認してください。守秘を理由に開示されない場合は、製造元から直接ラベル制作者へ情報を渡す枠組み(三者間の秘密保持)を組む必要があります。

3. 複合原材料(ソース・ペースト等)の展開

「たれ」「ソース」「シーズニング」のように、それ自体が複数の原材料からなるものを使っている場合、その中身を省略することはできません。書き方は2通りあります。

方法書き方向くケース
A. かっこ書きで展開SAUCE (SOY SAUCE (WATER, SOYBEANS, WHEAT, SALT), SUGAR, VINEGAR), ...複合原材料としてのまとまりを見せたいとき
B. 分解して統合複合原材料を分解し、構成成分を製品全体の重量順に組み込む共通原材料が多く、リストを短くしたいとき

Bを選ぶ場合、製品全体での重量を計算し直す必要があります。醤油に含まれる水と、別途加えた水を合算する、といった処理です。ここを誤ると重量順が崩れます。

4. 個別の注意が必要な原材料

着色料

認証を要する着色料(certified color additives)は、個別の名称で記載します。例:FD&C Yellow No. 5FD&C Red No. 40。「Artificial Color」とまとめることはできません。

認証を要しない着色料(野菜色素等)については総称が認められる場合がありますが、判断には個別確認が必要です。日本で「着色料(カラメル)」等と表記している製品は、必ず物質レベルまで確認してください。

化学的保存料

保存料を使用している場合、物質名に加えて機能を併記する必要があります。例:SODIUM BENZOATE (TO PRESERVE FRESHNESS)。名称だけでは不足です。

たんぱく加水分解物

たんぱく加水分解物は、由来となる原料を明示する必要があります。例:HYDROLYZED SOY PROTEIN。単に「Hydrolyzed Protein」とは書けません。

製造工程で加えた水は原材料として記載し、重量順の判定にも含めます。日本のラベルでは水が省略されていることが多いため、変換時に見落とされがちな項目です。

5. アレルゲンとの関係

米国では9品目(乳、卵、魚、甲殻類、木の実、落花生、小麦、大豆、ごま)が主要アレルゲンとされています。表示方法は2通りです。

  1. 原材料名の中で示す ― 例:LECITHIN (SOY)、FLOUR (WHEAT)
  2. Contains文で示す ― 原材料表示の直後に CONTAINS: WHEAT, SOY, SESAME

魚・甲殻類・木の実については、種類まで明示する必要があります(例:Salmon、Shrimp、Almonds)。「Fish」だけでは不足です。詳しくは FDAアレルゲン表示 完全ガイド をご覧ください。

※ ごまは2023年1月に9品目目として義務化されました。それ以前に作成された英文ラベルをそのまま使い続けている場合、ごまの表示が漏れている可能性があります。

6. 書き換え例 ― 日本のラベルから

米菓を例に、実際の変換イメージを示します。

表記
日本のラベルうるち米(国産)、しょうゆ、砂糖、みりん、添加物:調味料(アミノ酸等)、着色料(カラメル)
そのまま英訳
(不適合)
Rice, Soy Sauce, Sugar, Mirin, Seasoning (Amino Acids, etc.), Coloring (Caramel)
米国向け
(適合例)
INGREDIENTS: RICE, SOY SAUCE (WATER, SOYBEANS, WHEAT, SALT), SUGAR, MIRIN (GLUTINOUS RICE, RICE, ALCOHOL), MONOSODIUM GLUTAMATE, CARAMEL COLOR.
CONTAINS: WHEAT, SOY.

※ 上記はあくまで書き方のイメージです。実際の表記は配合内容・使用物質により異なります。個別製品の判断は一次情報と専門家の確認のうえで行ってください。

注目していただきたいのは、行数が増えていない代わりに、情報の深さが変わっている点です。「しょうゆ」が「SOY SAUCE (WATER, SOYBEANS, WHEAT, SALT)」になったことで、小麦アレルゲンが顕在化しています。日本のラベルのままでは見えなかった情報です。

7. よくある不備 ― 6パターン

  1. 一括名をそのまま英訳している(最多)
  2. 水が抜けている、または重量順の判定に含めていない
  3. 複合原材料の中身が展開されていない
  4. 着色料が個別名で書かれていない
  5. ごまの表示が漏れている(2023年より前の英文ラベルの流用)
  6. 原材料表示と栄養成分表示の間にロゴや広告文が挟まっている

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よくある質問

Q. 「調味料(アミノ酸等)」は英語でどう書きますか?

そのまま訳した表現は使えません。実際に使用している物質の一般名(例:Monosodium Glutamate)を個別に記載します。配合表を遡って中身を特定する作業が必要です。

Q. 原材料はどの順番で書きますか?

使用した重量の多い順です。水も重量に含めて判定します。2%以下の原材料は「CONTAINS 2 PERCENT OR LESS OF: ...」としてまとめる方法が認められています。

Q. 複合原材料はどう書きますか?

かっこ書きで構成成分を列挙するか、分解して製品全体の重量順に組み込むかの2通りです。構成成分を省略することはできません。

Q. 着色料はまとめて書けますか?

認証を要する着色料(FD&C Yellow No. 5 等)は個別名が必要です。認証不要のものは総称が認められる場合がありますが、個別確認が必要です。

Q. アレルゲンは別に書く必要がありますか?

原材料名の中で由来が明示されていない場合は、直後に「CONTAINS: ...」の形式で記載します。いずれかの方法で9品目の該当を明示してください。

出典・一次情報

本記事は以下のFDA公式情報および米国連邦規則に基づいて作成しています。規制内容は改正される場合があるため、実務判断の際は必ず最新の一次情報をご確認ください。

最終更新: 2026年8月23日

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別案件の法的助言ではありません。規制は改正される場合があります。